C'est la vie

新大陸の湖畔

鈍色の気だるさ

 

 一夜にして街から猫が消えてどこかに行ってしまったような寂しさ。大事に握り締めて白線の上を落ちないように歩いてみる。不在の存在は嫌い。いつまでも知らないでいたい。

手持ちぶさたの感情は深い悲しみの海にまた一つ溶けていく。色んなところで関係ないと思っていた話は深い海の下で繋がっている。別の海じゃない、僕のなかに一つしかない海で温かく悲しみという感情がたゆたっている。

今日もあのメロディを口ずさむ君がいる。やっぱりソレからは逃れられなくて、クラリネットみたいな優しく甘く痛い感情の音で目の前がいっぱいになる。人間みたいで、官能的で、痛くて、確実に絡め取られていく感覚が心地よくさえある。乱暴に奪い取って欲しいっていう欲望とか、心からジワジワと痛みを感じたい願望とか、根本的な痛みをメロディに乗せて君は口ずさむ。

 

水中で目を開けた時みたいに、くぐもって見える世界へ、深い海に向かってゆっくり泳いでいく。

 

悲しみの正体がこの深い海なのだとしたら。途端に目眩がする。こんな海、飲み込まれる以外に非力な僕が何を出来ると言うのだろう。引きずり込まれるように最後のゴングが5回なる。深い海が「君はやっぱりここに戻ってきてしまう運命なんだ」と囁いているよう。

肺が潰れそうな呼吸を一つ。君と心中。

 

 

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