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Le Nocturne

深淵を覗く時

甘えと情け

心のなかで蠢く正体不明の靄に苛立ちを覚える。誰のせいでもないこの不快感は多分ワタシにしか手に取れない。

「今夜にはもう分かるよ。」という声に「そうだといいな。」と返事をしてみるも、本当はそうはならないでほしかったし、あわよくば一生当事者になることを拒み続けようと試みる。

自分のなかに生まれた性をもて余す。腫れ物に触るかのような戸惑いに、今まで気付かない振りをしてきたがタイムリミットが迫りつつあるようだ。

スカートをはく。化粧をする。ヒールをはく。隣に座る酒臭いオヤジとの身体的距離を計りながら腕の生暖かさに吐き気が倍増する。甘えるときに声が高くなるのが気持ち悪い。AVで喘ぐあの人達と同じ性別であること、生々しすぎて直視出来ない。多分いつでもそちら側へ行くことが出来るのが怖い。一人の人間になりたい。乱雑になったこの魂をただ束ね委ねるだけのために、利便性だけを重視したこの脳みそに。受け入れられない何かから絶え間なく逃げ続けるこの行為に億劫になる。

 

「みんなのこと、好きだよ。みんなもワタシのこと好きになってよ。でもそれ以上ワタシに近付かないでね。」だなんて、ふざけたことを叫びながらビリビリに引き裂く。

 

多分気付けばワタシは一人になってて、随分遠いところまで来たものだな、と。隣のオヤジはいつの間にかいない。確かな酒の香りを残しながら。白い目をした人間。

 自分のなかからなるべく女性性を消す。中性になっていく。

ワタシのこと、愛して、愛さないで、というこの感情に名前を。