読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Le Nocturne

深淵を覗く時

京葉線

あたしは今日も潮の風をほっぺたで感じて、電車に乗り込む。身体に馴染んだ制服はあたしが女子高生であることを保障してくれる。美しさと若さと正しさが等しくあると思っているうちが花なのよね。ほら、みんなあたしを見てよ。愛してよ。

京葉線は東京と千葉を結ぶ車線で、海沿いを走る赤い車体は眩しすぎず廃れすぎずといい加減の赤みで、あたしはなかなか気に入っている。でも海沿いの強い風に煽られるのが苦手なのか、ちょっとの強風で止まってしまう乙女のような電車であり、毎朝のごとく止まる総武線や常磐線ほどではないにしろ結構やわっちい電車。まるで同じクラスの隣の席のあの子みたい。

総武線よりも常磐線よりも海沿いに走るので海がよく見える。行きしなはよく海を眺めている。海がちゃんと見えるように上りのときは右手の方に座っている。海の背景は工業地帯だけど、千葉のこういった東京にはなれきれないどんくささみたいなものが好きだし、可愛いなって思う。

千葉から東京になった瞬間ってあるじゃない。町並みとか見てて思う。あの、どことも交わることができない境目が時々、夕方みたいに見えるときがあるんだよね。光と影の境目みたいな。サティの音楽みたいな。明るいのも暗いのも嫌い。教室で友達と誰かの噂話で「きゃはは」って笑うのも楽しいけどね。あたしはずっと夕方みたいな瞬間が続けば良いなって思うの。まあすぐに消えてなくなっちゃうから好きなんだけどね、夕方。夏の1日が終わった後の日曜日の夕方に「ああ、今日も楽しかったな」ってアイスを食べてソファーに沈んでいくの、好きだったな。

スカートがフワッと風に乗って翻している感覚が好き。もうだめ、もうだめ、何かが見え透いてしまうようなダメなあたしもちゃんと愛して。