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Le Nocturne

深淵を覗く時

月 Episode2

 

いつも見ている月が幾分にも拡大されているような気がしたので、よく目を凝らしてみたものの次第に意識が薄れていった。どうやら、月のことを考えると思考が停止するようにかの組織に操作されているのかもしれない。私はこうべを垂れるまでもなく意識を深く落としていった。

 

次に目を開けた時、白い月が前方方向右手に見えた。月が追いかけてきた、と悟った私は驚くこともなく恐れることもなく雲に浮かぶ月の欠片がはらはらと後ろに零れ行く様を間近で見ていることに大きな幸せを感じていた。

隣のおじいさんが「あの月の破片がね、町に光を灯しているんだ。町の人々は空から降るあれを大切に手で掬ってから火で溶かし、固めてからそれを首に下げるんだ」と言った。なんて不思議なことをするのだろう、と惚れ惚れしていたらまた急に頭が重くなったような気がした。

その時、なるほどだから月がこの世界で一つしかないのか、と納得したものだった。