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帰還

恐らく夢物語としても、この道は母なる大海原へ、父なる大宇宙へと繋がっていることはバッハなりベートーヴェンなりブラームスが既に証明している事実であり、自らの命を以てして灯をともしその最期の微々たる炎が消えるまで喘ぎながらも泳ぐことを決意したあの日。

誰にでも心の奥底に故郷があって、それは銀世界かもしれないし、俯瞰したジャングルかもしれないし、自らが母の腹の内に居たときの記憶かもしれないけれど、理由もないのに揺り動かされる「好き」という心の機微に故郷の共鳴が関係していないとは到底思えない。故郷には何かしら「純粋さ」「イノセンス」が伴っていて、限りなく温度が低い冬の夜の星のように無駄を削ぎ落とした霊的な何かが、目に見える表面的な塵に濁ったこの眼を救ってくれるような気がする。それは私の場合は音楽であり、私が救われたからこそきっとこれから先また誰かが救われるんじゃないかと淡い期待を持っている。別に私が救ってやるとかそんな大層なことを言うつもりは本当に無くて、そんな救って救われての関係をたまたま私が結ぶことが出来たなら本望だという話。救うのはあくまでも音楽だから。こんな愚かな夢追い人に祝福を。

変わりゆく虚ろなものに恐れたとしても私はいつでもここに戻ってこれるよ、神様。