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Le Nocturne

深淵を覗く時

上野恩賜公園 不忍池

不忍池には首を折られたような蓮の水死体が互いにもたれ掛かるようにして今日も絶望している。何かありそうで何もない、精神的充足感を得られる訳ではないけど愛すべきこの町にそれは何故かぴったりで、こんなにも汚く萎れた茶色の水死体が私は嫌いになれなかった。

今日は朝もやを溶かしたような晴天ではなく、いつまでも呑気に気付かないフリをしてきた僕らに当て付けのような皮肉さが垣間見える曇天だった。全てがモノクロに見えるからなのか、行き交う人々の顔がよく見えない。休日の動物園に向かう親子とカップル、そしてそうじゃない人間が無意識に対立するようにして、でもこの上野公園の一帯に共存して今日を生きている。この不器用なバランスがさながら、枯れた蓮の水死体とその上の飛び回る白いユリカモメが上手く表現してくれているようで、精神的嫌悪感が増した。

何処と無く感じていた東京という町の不安定さ。最先端を目指そうとすればするほど何かの歪みが出てくる。永遠の安寧を保障されたかのように見せるこの町はいつもどこか不安定さを残してくる。過ぎた季節は戻らない。枯れた花はまた季節を乗り越えるけど、僕たちはどうなんだろう。蓮の水死体がまた幻想を見せてくれる頃、僕らはどこに向かっているのだろうか。

 

厭世的思考は何の生産性もないけど、そんな人間の脆さ儚さもまるごと抱き抱えてそれでも幻想を追い続けるこの東京は嫌いになれなかった。