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Le Nocturne

深淵を覗く時

幸せ

あなたの軌跡を辿る。丁寧に地に埋まった亡骸を拾っていく。冬の色した骨の冷たさを感じる内に、あなたとの距離が肌を通して分かってくるの。あなたが段々輪郭を成して私のなかに立ち上ってくる。あなただって分かっているでしょう。私達はもう死ぬまで永遠に平行線で交わることがないのよ。

私があなたの背中に寄りかかるとすぐにどこかへ行ってしまう。手から零れ落ちるあなたの残滓が乾いて消えていく前に。行かなきゃ、行かなきゃ。どんどん遠くへ行ってしまう。あなただって知っているでしょう。一度知った蜜の味は忘れることが出来ないのよ。

 大事なことを見過ごさないで。どうかそう易々と教えないで。空に浮く光の粒子に反射して見えないのなら、焦点を合わして。冬に飲まれないで。

あなたもやっぱり人だったのね。色々な切れ端からあなたの体温を感じる。水のなかに絵の具を溶いたように。重さを感じないのに、確かな温もりと愛と哀しみが漂っている。血が。それを一つずつ舐めて確かめたいの。もっと頂戴な。その残滓。

 

みんな幸せを願うけど、みんな一緒に幸せになれない世界を呪うよ。せめてもう少しあなたの骨を拾わせて。もう少し。