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Le Nocturne

深淵を覗く時

今夜の月はなんだか泣いているみたいだ。伏し目がちなその目に涙の粒が一つ転がって、果てしなく深い藍色に染まってしまいそう。

どうしたの。何があったの。元気だしなよ。

当の本人はもう西の彼方に沈んでしまおうと少しだけ焦っている。怖がらなくていい。大丈夫。

下界の人々はその涙が美しいと感じる。その涙の欠片がはらはらと散って町中の光に溶け込んで消えちゃう。けど私はそれをそっと優しく手で受け止めて息を吹きかけながら丸くして石に閉じ込めるよ。本当にその涙が美しいから。