読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Le Nocturne

深淵を覗く時

皺寄せ

地元に帰ってきた。

夜空色の壁紙を天井に貼り付けたような東京の夜はここにはない。見渡す限りに、空に空が敷き詰められている。星が星だと主張する。果てしなく黒に染められた空が、確かな緊張感と温度を持って私たちを覆っていた。これなら地球が丸いと納得できる。

 

山を下ればクリスマスの残りカスのような気分の悪くなる雑踏が溢れている。少しでも息をすると身体が毒されていく。どいつもこいつもクリスマスを押し付けてくる。世界に数少ない避難場所を求めて息を潜めて人の波を掻い潜る。

 

いつから世間のクリスマスが嫌いになったのだろう。自分の片想いが上手くいかないからだろうか。世界がきらびやかになるにつれて私の心の中のドロドロした部分もより一層闇を濃くする。ラジオから流れる切ない恋を歌ったクリスマスソングに本当にヘドか出そうになる。そんな簡単にメロディにのせてもらっては困るのだ。もうなにも同情も共感もない、ただの騒音。そんなときは急いでイヤホンをして耳から椎名林檎を流し込む。まるで栓をするかのように、シャットアウトしてしまう。体の中が満たされてやっと落ち着いてくる。

クリスマスから炙り出されているのは「孤独」だ。体中を擦っても擦ってもこびりついた孤独はとれない。でももう冷たい夜じゃないと乗り越えられない。もうビョーキと呼んでくれて構わないよ。世界に馴染めない。

 

山の上の我が家に帰ろう。身が千切れてしまいそうな恋を思い出すのをやめよう。明日は教会に行ってミサを受けよう。でないともう耐えられそうにない。