海の向こう側

銀座を歩くと誰も知らない私のことなんか、と口ずさむ。 新宿を歩くと、そこにはギターを片手に豪雨を叫ぶ少女がいる。 君の影が揺れている 今日限り会える日時計 いつもの夏がすぐそこにある証 まだ見ぬ歌舞伎町には女になった私がそこにいる。 沢山の憧れ…

告白

夕方なのに世界が青い。ああ、まだ夏だなって思った。 酷く目眩がする。遠くから何かがやってくる。雲間を縫った光のカーテンと、それを映す青い血が底を満たしていく。 幾千もの点が線になって面になって広がりをみせるこの海が、まるで僕らの音楽のようだ…

ほんとの気持ち

頭が偉い時代が終わりました。 長くて、窮屈で、矛盾だらけで、けれど温室。 これからは頭の時代の名残を惜しみながらちょっと背伸びをして、休憩して、背伸びをして、休憩。頭の時代もあれはあれで良いものでした。 想像が好きだったことを思い出しました。…

世界が終わる夜に

神様がその人から何かを奪うとき、一体その心は? 例えばお気に入りの傘、思い出の手紙、言葉、大事なペット、最愛の人、若しくは自分の命。 その人から何かを奪って、残された人間は何を思えば良いのだろう。残されたものの痛みは?どうして奪っていってし…

世迷言

全く知らない国の全く知らない音楽を耳から流し込む。 いつもと違う時間に道を歩いて、猫がいない高架下を見つめてみる。 高校の時にした授業中のノートの端っこの落書きにはもう会えない。 全部錯覚。錯覚。錯覚。 実はほんとのことなんて誰も知らなくて、…

消費

こうして言葉とか目に見える形で残す気力さえこの湿気がすべてを掠め取っていく。鈍く冷たいナイフのようなその切っ先がいつ自分の首元を掻ききるのか、そしてそれは誰でもない自分の手によって行われてしまう恐怖。 別に私がやらなくてもいいじゃん、だとか…

幸せ

あんなに高校の友達と会うことを拒否し続けてたのに、そんな悲しい決意も脇に置かれて懲りずに会いに行く。多分、この気持ちは強がりかもしれないし、全て若さで説明をつけてしまいたいぐらいには私も若い。 帰りの電車は人身事故ですごい遠回りをした。あま…

もし今、自分が本物を追い求めたくて無我夢中で振り切っていたとして、でもそれってただの猿真似だったんじゃないかと不意に突きつけられる刃は、夜道を一人で歩くときに頬を掠める北風と似ている。

島国

午前2時。 線路の近くにあるこの家に、本物の静寂が訪れる。 本日の業務を終えたJR東日本は沈黙を守り、逆に私はオーディオから音を引き出し始める。 鼻歌まじりに音に合わせて音高を揃えたら、母親にご機嫌ね、と部屋を覗かれる。 どうして涙と海が同じ塩味…

深海

多分僕は馬鹿なんだと思う。頭の賢さでも、おそらく人間的にも謙遜でもなんでもなく、総合的に見て不器用さが際立っている。汚い。 ああ、まただ。体ごと海の底に沈んでいくこの感覚。耳元で空気が「ゴポ...ゴポ...」と漏れていく音が聞こえてくる。もがけば…

帰還

恐らく夢物語としても、この道は母なる大海原へ、父なる大宇宙へと繋がっていることはバッハなりベートーヴェンなりブラームスが既に証明している事実であり、自らの命を以てして灯をともしその最期の微々たる炎が消えるまで喘ぎながらも泳ぐことを決意した…

顕微鏡でズームばっかりしてるから

音楽に意味なんてないのに、そんな空っぽな自分を守りたがるのは何故なのだろう。ただ好きなだけなのに、こんなに傷ついた気持ちになるのは何故なのだろう。 バンドによくある音楽性の違いによる解散とか言うやつは意外とバカにできないことが分かるし、相手…

恥ずかしい話

恥ずかしい話。 同じ文章を読んでも全く感想が違った。今まで当たり前すぎて気付かなかった。ある文章を僕は涙を堪えながら読んだ。その傍ら世界はそれを鼻で笑っていた。 同じ音楽を聞いていても全く感想が違った。皆似たような感覚を共有しているものだと…

Rêverie

親愛なる...へ 永遠の優しい微睡みを今日もあなたに。 静かに瞼を閉じればほら、貴方にしか会えない夢。 夜色した淡い夢が貴方の四肢を、心を、優しく抱いてくれる。 指先から、唇から、瞼から、色が溶けていく。 今日も舟を漕ぎ出そう。 水面に映る貴方の影…

幸せ

あなたの軌跡を辿る。丁寧に地に埋まった亡骸を拾っていく。冬の色した骨の冷たさを感じる内に、あなたとの距離が肌を通して分かってくるの。あなたが段々輪郭を成して私のなかに立ち上ってくる。あなただって分かっているでしょう。私達はもう死ぬまで永遠…

また会おう

僕の中の街が死ぬ。10年の時を経て。 見上げた夜空にはそこかしこに光。西の空に大きな金星。結局最後まであの等間隔に並ぶ星の名前が分からなかったな。星にもちゃんと色があって、なんだか皆が弱々しくも「僕はここにいるよ」って問いかけてきている。小さ…

定まらない視線

本物なんてどこにある。 嘘にまみれた言葉使いの僕たちに。 嘘に嘘を塗りたくったのに、どうして本物が見えるというの。 そんな言葉を操って本物を見たような気になっている。 価値が。 ああ。 これ以上知りたくない。

皺寄せ

地元に帰ってきた。 夜空色の壁紙を天井に貼り付けたような東京の夜はここにはない。見渡す限りに、空に空が敷き詰められている。星が星だと主張する。果てしなく黒に染められた空が、確かな緊張感と温度を持って私たちを覆っていた。これなら地球が丸いと納…

本当の孤独は「自分が孤独である」と口にする必要すらも無くなり、しかもその事を語る相手すら居ない。 外界と自己内部の境界線が段々と曖昧になっていく。二つは肌を重ねながらゆっくりと夜に溶けていく。最早音楽が自己の内部にあるのか外部にあるのか分か…

There is no trace left behind

僕らは決して戻れない。 流れ行く歴史を戻せない。 いつも僕らの目は現在から過去を見つめている。 それじゃ何も見えないね。お前のために沢山の言葉が生まれて沢山の言葉が死んだよ。 消えた言葉を弔ってやろう。 闇へと葬り去られないように。 歴史の裏側…